《わし》は医者だ、眼病には家法で妙な薬を知って居《お》るが、何処の医者に掛って居《お》るかというと向うで秋田穗庵に掛ったという時|蔑《けな》すのだ、彼《あれ》は藪《やぶ》医者でいかぬ、私《わし》の家伝に妙な薬があるからやる、礼はいらぬたゞやると云う、たゞは貰えぬと云うから、そんなら癒《なお》ったら書物を書いて貰いたいという、そこで目を治させるという情《じょう》の処でやるのだ」
忠「成程、恐入りましたねえ、仇《あだ》のある者に仇を復《か》えさず、仇を恩で復えして置いて、娘を己《おれ》の処へ嫁にくれぬかというと、向うで感心して、手付かず貰えますな」
蟠「そうではない、向うでも中々学問のある奴だから答が出来んではならぬ、それは穗庵に聞いて薬もあるが、早稲田《わせだ》に鴨川壽仙《かもがわじゅせん》という針医がある、其の医者が一本の針を眼の側《わき》へ打つと、其処《そこ》から膿《のう》が出て直ぐ治る、丁度今日|行《ゆ》けば施しにたゞ打ってくれる、目は一時《いっとき》を争うから直ぐ行くが宜しい、私《わし》が手紙を書いても宜しいが、施しだからお出《いで》なさいというと、勧めによってひょこ/\出て
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