御免下さい、大きに遅なわりました、松屋新兵衞も御機嫌を伺います筈でございますが、繁多《はんた》でございまして、存じながら御無沙汰になりました、宜しく申上げてくれるようにと申し、大きに馳走になりました」
 母「大分《だいぶ》遅いから案じて居ったが、あの人は堅いからお前に助けられた恩を忘れず、江戸へ出さえすれば再度訪ねてくれます、殊に毎度手紙を贈ってくれて、あゝ云う人と遊んで居《お》ると心配はありません、直ぐにお帰りかえ」
 文「直ぐに宿屋まで帰りました」
 母「それは宜かった、お前の帰りが遅いと案じて居《お》る……文治郎お前の額《ひたえ》は」
 文「エ……」
 母「余程の疵だ、又喧嘩をしたのう」
 文「いえ喧嘩ではございません、つい曲り角でそげ竹を担《かつ》いで居《お》る者に出逢い、突掛《つきかゝ》りました、無礼な奴と申し叱りました処が、詫を致しますから捨置きました」
 母「いえ/\竹の疵ではない、お前の帰りが遅いから心配していた、つい先月お前の二の腕に刺青《ほりもの》をしてお父様《とっさま》に代って私が意見をしたのを忘れておしまいか、お前は性来《せいらい》で人と喧嘩をするが、短慮功を為
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