て、却ってお腹立の増すことに相成《あいなり》重々恐入ってござる、此のお詫言《わびごと》には重ねて参りますから左様御承知下され」
とずっと後《あと》へ下《さが》って、兼元の脇差を左の手に提げたなりで玄関から下りようとすると、文治郎の柾の駒下駄が外に投《ほう》り出して、犬の糞《くそ》などが付けてあります。尚々《なお/\》癇癖に障りますが、跣足《はだし》で其処《そこ》を出《い》で、近辺で履物《はきもの》を借り、宅へ帰ったのは只今の七時頃でございます、母は心配して待って居ります。文治郎は中の口から上りますると、森松も案じて、
森「余《あんま》り帰《けえ》りが遅いから様子を聞きに行《ゆ》こうと思って居りました、お母《っか》さんの前《めえ》は仕方がねえから、前橋《めえばし》の新兵衞さんが来て海老屋で一猪口《いっちょく》始まって居りやすと云って置きやした、蟠龍軒は驚いて直ぐに極《きま》りが付きやしたろう」
文「心配せんでも宜しい、お母《っか》さまに鳥渡《ちょっと》お目に懸ろう」
母「文治が帰ったようではないか」
森「お帰《けえ》りでございます」
母「さア此方《こっち》へお這入り」
文「
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