耐《こら》えまするは切《せつ》ないことでございます。尚更|此方《こっち》は高ぶりまして、
 蟠「やい/\此処《こゝ》を何処《どこ》と心得て居《お》る、大伴蟠龍軒の道場へ来て、手前達が腕を突張《つっぱ》り、弱い町人や老人を威《おど》かして侠客の男達《おとこだて》のと云う訳にはいかぬ、苟《かりそ》めにも旗下《はたもと》の次男三男の指南をする大伴蟠龍軒を何《なん》と心得る、帰れ/\」
 門弟がつか/\と来て、「さア帰らっしゃい、強情を張ると却《かえ》って先生の癇癖に障るから帰れ/\」
 さき「誠に有難うございます、あなた方の前では此の通りでございます、小さくなって碌に口もきけませんが、私のような弱い婆《ばゞあ》の前では、咽喉《のど》をしめるの何《なん》のと云って脅しました、先生の前では何《なん》とも云えまい、咽喉をしめるなら締めて見ろ」
 和田原安兵衞というのが「帰れ/\」と云いながら文治郎の手を取って引こうとすると、七人力あるから中々動きません。
 安「何《なん》だ、帰らぬかえ」
 文「先生、文治郎が能く事柄も弁《わきま》えませずに斯《かゝ》るお席へ参り、不行届《ふゆきとゞき》の儀を申上げ
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