だいぶ》どうも何《なん》だね、お噂よりは美くしいね」
 怪《け》しからぬことを言う奴と思ったが文治郎は、
 文「えー、今日《こんにち》お目通りを願いたい心得で罷《まか》り出ましたが、御不在であるかお逢いはあるまいかと実は心配致して参りましたが、お逢い下すって誠に此の上も無《の》う大悦《たいえつ》に存じます、少々仔細あって申し上げたい儀がございまして罷り出ましたが、大分お客来《きゃくらい》の御様子、折角の御酒宴のお興を醒《さま》しては恐入りますが、御別席を拝借致して先生に申し上げたいことがありまして」
 蟠「いゝえ、なに別席には及ばぬ、これは門弟だから心配には及びません、直《す》ぐにこれで逢う方が却《かえ》って宜《よ》い、何《なん》なりと遠慮のう直ぐにお話し下すって」
 文「左様なれば申し上げますが、他《ほか》の儀ではございませんが、紀伊國屋友之助の儀に付いて罷《まか》り出ました」
 蟠「成程、何しろ席が遠くて話が出来ぬ、遠慮してはいかぬ、此方《こっち》へ這入って下さい、剣術遣いでも野暮《やぼ》に遠慮は入りません、丁度相手欲しやで居りました、どうかこれへ」
 文「御免下さい」
 と這入ろ
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