断りだ」
 森「しょうがねえ、友さん、旦那があきらめろと云うから諦めねえよ」
 文「諦めるなれば百両は取返して遣《や》ろう、だがそれ程企んで取った百両だから、返すかどうか知れぬ、元より取返そうとすれば喧嘩になり、退《ひ》くに退かれなければ世間を騒がせなければならぬ、お前に気の毒だから、若し向うで百両を返さぬとなれば百金は私《わし》が償《つぐな》ってお前に上げる心得だ、お前の為に百両は損をする気で中へ這入るのだから、其の志を無《む》にしないで、お村を諦めなさいよ」
 友「へー/\私《わたくし》はあきらめましょうが口惜《くやしゅ》うございます、私は実に残念でございます」
 文「嘸《さぞ》残念であろうが、其の代り後《あと》は幸福《しあわせ》になる」
 友「彼奴《あいつ》を諦めます代りには彼奴唯は置きません、走り大黒様へ針を打ちます」
 文「そんな詰らぬことを云ってはいかぬ、何処《どこ》か近所に医者があるだろう」
 と茶店の亭主に医者を尋ねさせ、外科医者が来て頭の疵に膏薬《こうやく》を付け、駕籠に乗せて友之助を帰し、翌日夕景から、母の前は松新が迎いに来た体《てい》にして、文治郎は大伴蟠龍軒の玄
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