去年牛屋の雁木で心中する処を助けられ、漸《ようや》く夫婦になった者を、取られた上に打ち打擲されて、これもお村故でございます、仮令《たとえ》一晩でも取返して女房にした上、表へ逐出《おいだ》そうとも、彼奴が鬢《びん》の毛を一本々々引抜いて鼻でも切って疵だらけにしなければ腹が癒《い》えませんから」
文[#「文」は底本では「森」と誤記]「其様《そんな》ことをしたって詰らぬから、私《わし》の言うことを聞いて、あれは諦めな、負けたのはお前の過《あやま》りだから、百両の金で不実な女房を売ったと思って、諦めた方が宜しい」
友「私《わたくし》は諦められません、私《わたくし》が取《とり》かえして半年でも女房にして逐出します」
文「出したり入れたりしては詰らぬから、それよりはお村よりも優《まさ》った立派な女房を文治郎が世話をしようから、あれは諦めな、為にならぬから」
友「為にはならぬが、あの畜生、お村様と云えと云いました」
文「諦めなよ」
友「あきらめられません、三日でも宜しい、三日夫婦になって、彼奴《あいつ》の顔を疵だらけにして逐出します」
文「そんな奴があるものか、お村に未練があるなればお
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