文「其の金はどうした」
 友「其の金は其処《そこ》へ置いて掛合ったので」
 文「持って帰ったか」
 友「掛合中に突然《いきなり》に引摺り出されたから目の前にあっても取る事は出来ません」
 文「成程、至極尤もだ、友さん如何《いか》にもお前は善人だ、金と女房を取られた上に打《ぶ》たれて気の毒千万だ、私は母に誡《いまし》められて喧嘩の中へ這入《はい》ることは出来ません、素《もと》より人の掛合に頼まれることはせぬ積りだが、どう云う訳か去年の暮から別懇になったからして如何にも気の毒だから、私が往《い》って百両の金だけは取返して上げまいものでもないが、女房お村の取返しは御免だ、其の位企みをして妾にしようとするお村を取返さんとすれば面倒になり、どのようなる理不尽なことをするか知れぬ、其の時は引くに退《ひ》かれぬ場合になる故に、お村を取返すことは私《わし》は頼まれぬ、お村は諦めな、あれはいかぬ、お前の為にならぬ女だ、あれが了簡の不実なのは見抜いて知っている」
 友「旦那様、そう仰しゃいますが、私《わたくし》はあれは諦らめられません、私《わたし》は彼奴《あいつ》故主人を失策《しくじ》り、友達には笑われ、
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