てそんな」
蟠「これ/\何を大きな声をする……これ此の通り「金三百両|但通用金也《たゞしつうようきんなり》」どうだ、これを見ろ」
友「へえ……おや/\」
と友之助は証文を見ると阿部忠五郎が金の字と百の字の間を少し離して書いて、其の間へ無理に三の字を平《ひら》ったく篏込《はめこ》んで入字《いれじ》をした百両の証文が三百両だから、
友「これは/\三百両」
蟠「ソーレ見ろ、三百両どうだ、手前得心で印形を捺《お》したではないか、痴漢《たわけ》め……蟠作これへ出ろよ、百金を持って来たからお村を返せと云うが返して遣るか」
蟠作[#「蟠作」は底本では「蟠」と誤記]「怪《け》しからぬことでげす」
と云いながらスラリッと襖《ふすま》を開けると蟠作に続いて出ましたのがお村、只今で云う権妻《ごんさい》です。お妾姿で髪は三《み》つ髷《わ》に結い、帯をお太鼓にしめてお妾然として坐りました。続いて柳橋のお村の母お崎|婆《ばゞあ》が隠居らしく小紋の衣物《きもの》で前帯にしめて、前へのこ/\出て来た。
友「おやお村、お母《っかあ》も」
お崎「誠に貴方方《あなたがた》には相済みませんが私《わたくし》も
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