所へ来ねえ」
 國「何もお前《めえ》さんに云うのじゃアありませんから手を引いておくんなせえ」
 森「手を引くも引かねえもねえや、己も番場の森松だ、お前《めえ》の帰りはのいゝようにして遣《や》るから云う事を聞きねえな、己も是れ迄そんな事は度々《たび/\》やった事があるんだナ」
 國「おい、訝《おか》しな事を云いなさるぜ、お前《めえ》さんはこんな事が度々ありましたか、私《わっち》ア骨の折れる程嚊を打《ぶ》たれたのは初めだ、お前《めえ》さんは森松さんか何か知らねえが、お母様《ふくろさん》に願っているのにお前《めえ》さんのような事を云われると、私《わっち》ア了簡が小《ちい》せえから屈《すく》んで仕舞って、ピクーリ/\として何《なんに》も云えないよ」
 森「おい、大概《たいげい》にしねえな、そんな事をいつまで云っても果《はて》しが付かねえから、おいこう、まア台所へ来ねえって事よ」
 母「森松黙っていな」
 森「まアお待ちなさい、お前《まえ》さんは知らないのだから、おい兄イそんな事を云っても仕方がねえ、人間を打殺して下手人になっても人が入《へえ》れば内済《ねえせい》にしねえものでもねえから、お前《
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