めえ》の方へ連れて往《い》けば話の付くようにするから台所へ来な」
 國「おい兄さん、人を擲殺《たゝッころ》して内済《ねえせい》で済みますかえ、そりゃア済ます人もあるか知れませんが、私《わっち》アいやだ、怖《おっ》かねえ事を仰しゃるねえ、お母《ふくろ》さん、こんな事を云われると私《わっち》ア臆病《おくびょう》ものですからピクーリ/\としますよ」
 森「台所へ来いよ/\」
 と森松は懊《じ》れこんでいくらいっても動きません。其の筈で森松などから見ると三十段も上手《うわて》の悪党でござりますから、長手の火鉢《ひばち》の角《すみ》の所へ坐ったら挺《てこ》でも動きません。処《ところ》へ業平文治が帰って来まして、
 文「森松|此処《ここ》を片付けろ」
 と云うから、森松は次の間の所へ駆出《かけだ》して、
 森「あなたは大変な事をやりましたねえ」
 文「何を」
 森「杉の湯で國藏の嚊を打擲《ぶんなぐ》りましたろう」
 文「来たか、昨夜《ゆうべ》打擲った」
 森「打擲ったもねえものだ、笑い事じゃごぜえやせん、彼奴《あいつ》は一《ひ》ト通りの奴じゃアありませんから、襤褸褞袍《ぼろどてら》を女に着せて、膏
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