と云われては困ります、何も銭金をお貰い申しに参った訳ではありませんから、当期此方の台所《だいどこ》の隅へ置いて下さい、五年掛るか十年掛るか知れませんが、どうか癒《なお》るまでおいておくんなせえ」
母「御立腹でもございましょうが、そんな事を仰しゃらないでお手当は十分に致しますからお連れ帰りを願います」
國「いえなに、銭金は入りません、医者も私《わっち》が頼んで来ます」
母「どうかそう仰しゃらないで」
と只管《ひたすら》頼めど悪党の強請騙りをすることをもくさん[#「もくさん」に傍点]と申して、安い金では中々云う事を聞きませんから、
森「兄イ兄イ…お母《っか》さん黙っておいでなさい…兄イ此処《ここ》じゃア話が出来ねえから台所へ往って話をしよう、己《おれ》は番場の森松と云う者で、悪い事は腹|一杯《いっぺえ》やって、今は此方の旦那の家《うち》に食客《いそうろう》だ、旦那は無闇に弱い女や人を打《ぶ》つような方じゃアねえ、お前《めえ》の処《とこ》の姐御《あねご》が何か悪い事をしたのだろうが、銭を貰っちゃア親方に済まねえと云うが、そんな事を幾ら云っても果てしはつかねえ、サックリ話をするから台
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