と云う証文はどうです」
 蟠「それは至極面白い、酒の座敷ではそう云う洒落《しゃれ》た証文は面白い、それじゃア紀伊國屋、若し金が返せぬときは女房を貴殿方へ召使に差上《さしあげ》るという証文はどうだ」
 友「成程それはどうも」
 蟠「面白かろう」
 友「飛んだお面白い洒落で」
 友之助は根が善人ですから、よもやと思って得心しますと、
 阿「私《わたくし》が書きましょう」
 と阿部忠五郎がすら/\と書きましたのを知らずにピタ/\印形を捺《お》して向うへ渡しました。阿部忠五郎と云う男は元より碁に負ける様な者ではない、碁は三段から打ちまして田舎廻りの賭碁で食っている。忠五郎|企《たく》みも企んだ証文を書いて百両賭で遣ると、忽《たちまち》にパタリと紀伊國屋が取られました。
 蟠「どうした」
 友「取られました、残念でございます、これは負切《まけき》りにはしません」
 蟠「まア/\そう焦《あせ》るな、心配すると面白くない、互いに熱くなって筋を出しては面白くない、金はどうでも宜い、まア/\一杯飲んで機嫌|好《よ》く帰れ」
 とこれからお酒になって紀伊國屋を機嫌|能《よ》く帰しましたが、友之助は正直な男
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