けこ》んで来る、どうも敵に後《うしろ》を見せる訳にもいかぬから遣りましょう」
 とそれからパチリ/\と遣りますと紀伊國屋が勝ちます。
 阿「此度《こんど》は倍賭けで二両で」
 と出ると又紀伊國屋が勝つ。又四両八両と云うので段々大きくなり十両が二十両となり幾度《いくたび》遣っても阿部が負ける。
 友「もういけませんよ」
 阿「ウーン紀伊國屋、まア其処《そこ》へ置きな、遣らぬではない、遣るが残念だから一時《いちどき》に思い切って五十両|賭《がけ》と為《し》よう」
 蟠「阿部大層|大形《おおぎょう》になったな、そう腹を立ってはいかぬ」
 阿「いや余り残念だから、紀伊國屋逃げてはいかぬ」
 友「逃げやアしませんが、お気の毒様です、阿部様の五十両を唯頂戴致しますと恐入《おそれいり》ますからな」
 阿「唯なんてそう云うことを云うから残念だと云うので」
 と又遣ると今度はたった二目の違いで紀伊國屋が負けました。
 友「さア遣られました」
 蟠「どうした負けたか」
 友「負ける碁ではないが二目の違いで負けました、残念です」
 蟠「紀伊國屋は先に勝ったから宜しい、今度は負《まけ》ずにやれ」
 友「残念で
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