阿「あれさ黒はいかぬ、白を持ちな」
 友「どう致しまして」
 阿「手前《てまい》は白を持ったことはない、お前は上手らしいから私《わし》は黒が宜い」
 友「じゃア参りましょう」
 とパチリ/\と根が好だから夢中になって二番ばかり打ちますと、阿部はばた/\と負けた。
 蟠「どうしたの」
 阿「へえ何《ど》うも紀伊國屋強うございます」
 蟠「勝《かっ》たか」
 友「阿部様はほんの飴《あめ》でしょう」
 阿「なか/\飴でない」
 蟠「どうして阿部はとてもいかぬ、へぼだ、へぼで飴を食わせることは出来ぬ」
 阿「じゃア斯《こ》うしましょう、張合《はりあい》になりませんから負けたら大きいもので一杯グーッと飲んではどうでしょう」
 蟠「狡《ずる》い事を考えるな、阿部は自分が酒が飲みたいものだから」
 阿「そうでない、さア遣りましょう」
 蟠「これ/\友之助、阿部はむかっ腹を立てゝ面白いから一両ばかり賭《か》けて遣りなさい、慾張って居《お》るから取られると額《ひたえ》へ筋を出して面白いから、阿部、紀伊國屋と一両賭けて賭碁《かけご》は何《ど》うだ」
 阿「どうも勝って来たものだから直《すぐ》に附込《つ
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