一日でございます。店開きを致して僅《わず》か十日ばかり経《た》つ中《うち》に、友之助は店に坐って商いをして居ります。袋物店《ふくろものみせ》でございまして、間口は狭くも良い代物《しろもの》があります。おむらは台所廻り炊事《かしぎ》の業《わざ》などをいたして居ります。ふと通り掛った武士、黒羅紗《くろらしゃ》の山岡頭巾《やまおかずきん》を目深《まぶか》に冠《かぶ》り、どっしりとしたお羽織を着、金造《きんづく》りの大小で、紺足袋に雪駄《せった》を穿《は》き、今|一人《いちにん》は黒の羽織に小袖を着て、お納戸献上《なんどけんじょう》の帯をしめて、余り性《しょう》は宜しくないと見えて、何か懐中へ物を入れて居《お》ると帯が皺くちゃになって、掛《かけ》は頂垂《うなだ》れて、雪駄穿《せったばき》と云うと体《てい》は良いが、日勤草履《にっきんぞうり》で金《かね》が取れ、鼠の小倉《こくら》の鼻緒が切れて、雪駄の間から経木《きょうぎ》などが出るのを、踵《かゝと》でしめながら歩くという剣呑《けんのん》な雪駄です。微酔《ほろよい》機嫌で赤い顔をして友之助の店先へ立ち、
 士「こう阿部氏《あべうじ》、大分《だいぶ
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