配なさるのでしょう、宜しい、お詫に出ましょう、かやがお母様の御意《ぎょい》に叶《かな》って居りますから、かやも同道致してお詫に上りましょう」
 と直ぐに羽織を引掛《ひきか》け、一刀|帯《さ》して女房おかやを連れ、文治郎の台所口から、
 喜「はい御免なさい」
 森「藤原さんですか、お母さんが膳を転覆《ひっくりけえ》して旦那もお困りですが、お母さんは※[#「※」は「箍」で「てへん」のかわりに「きへん」をあてる、151−7]《たが》がゆるんだのだ」
 喜「これ大きな声をしてはいけません」
 と母親の居間へ通り、
 喜「お母様御機嫌宜しゅう」
 母「おやお揃《そろ》いで」
 喜「只今承わりましたが、文治郎殿がお失策《しくじり》で中々お聞入れがないから、手前に代ってお詫をしてくれと、何事にも恐れぬ文治郎殿が驚かれ、顔色《かおいろ》変えて涙を浮べ頼みに参ったから直様《すぐさま》出ましたが、どうか御了簡遊ばして、御飯を召上るように願います」
 母「決して詫などをして下さるな」
 か「お母様、そんなことを御意遊さずに御免下さい、彼《あ》の文治郎さまの御気性でお驚き遊ばしたのはよく/\のことでございます
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