へ参り。
文「はい御免」
喜「おや/\さア此方《こっち》へお上り、おかやや文治郎殿がお出《いで》なすった、鳥渡《ちょっと》お茶を入れて」
か「はい」
喜「鳥渡|上《あが》ろうと存じて居りましたが、今日は内職を休んで家《うち》にいた処で、丁度宜しい、まア此方へ」
文「少々お願《ねがい》があって参りました、母が立腹を致して三日程食事をしません、種々《いろ/\》詫を致しても肯《き》きません、手前が喧嘩の中へ入り、匹夫の勇を奮い、不孝の子を見るのが厭だから餓死して意見をすると申して肯きません、此の詫ことは貴方《あなた》より外《ほか》にない、どうか貴方お詫ことを願います」
喜「いやそれは、お母様《っかさま》が御膳が進まんと云う事はきゝましたが全くですか、昨日《きのう》お見舞に出た時、お食は如何《いかゞ》ですと申した処が、なに御飯《ごはん》は三|椀《ばい》も喫《た》べられて旨いと仰ゃったが、それでは嘘ですか、命を捨てゝも浪島の苗字《みょうじ》が大切と思召《おぼしめ》し、御老体の身の上で我子《わがこ》を思う処から、餓死しても貴方の身を立てさせたいと思召す、それに貴方が御孝心ゆえ左様に御心
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