孝行だって相手が悪くっちゃア仕様がねえなア」
文「これ何を云う、其方《そっち》へ行《ゆ》け、なぜお母さまの前でそんな事を云うのだ」
森「それだってあんまりだア、旦那|自暴《やけ》を起しちゃアいけねえ、お前さんの様な親孝行な人はねえ、旦那が自分でお飯《まんま》を炊いてお菜《かず》までこせえて食わせようと云うに…そんな人がある訳のものじゃアねえ、私《わっち》なんぞが道楽をする時分にゃア、お母《ふくろ》が飯を炊いてお菜をこせえて、さア森やお飯が出来たから起ろよ、と云われて膳に向い、お菜が気に入らねえと膳を足で蹴ったものだ、それを一軒の立派な旦那がお飯を炊いて食わせるのは一と通りの訳じゃアねえ、怒《おこ》らねえでも宜《い》いじゃアねえか」
文「これ/\手前の知ったことではない、此のお詫ごとは藤原喜代之助に限るな」
森「へえ/\」
文「藤原の女房を殺したことが今出て来たのだな」
森「へえ/\成程、藤原の先《せん》の女房は彼《あ》の婆さんに飯を食わせずにいて殺されたから、それでお母さんが食わなくなったのだ」
文「そうじゃアないわ、喜代之助でなければ」
と文治郎は直《すぐ》に藤原の宅
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