《っか》さん食べておくんなせい、お願いだ、旦那も心配していらア、旦那だって喧嘩はしたくはねえが拠《よんどころ》なく頼まれて人を助けるのだから、まア堪忍して食《く》っておくんねえ」
母「なんの、手前まで喧嘩があると悦んで飛出す癖に、其方《そっち》へ行《ゆ》け」
森「お母さん、じれちゃアいけませんよ」
母「手前の知ったことではない」
と叱られて、文治郎と一緒に次の間へ来まして、
森「どうしたのでござえますね」
文「はて私《わし》を仕置《しおき》のため御膳をあがらんのだわ」
森「へえ変ですねえ、仕置にお飯《まんま》を喰わせねえというのは聞きやしたが、自分の方で喰わねえのは妙だねえ」
文「お母さまは茶椀蒸がお好《すき》だが、いつでも、料理屋で拵《こしら》えたのよりは、文治郎の拵えたのが宜しいと仰ゃって喰《あが》るから、蒸《むし》を拵えましょう…蒲焼《かばやき》の小串《こぐし》の柔かいのと蒲鉾《かまぼこ》の宜しいのを取ってこい、御膳は私《わし》がといで炊くから」
とこれから文治郎自分で料理をして膳を持って障子を開け、
文「お母様、先程の御一言は文治郎の心魂に銘じました、御一命
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