す…御免下さい」
 と障子を開《あけ》ると母親は座蒲団の上に行儀正しく坐っているのを見て、
 文「此の程はお食《しょく》が頓《とん》とおすゝみにならぬそうで、文治郎も驚き入りました、三日も食《あが》らんと云うことはさっぱり存じませんでした、お加減が悪ければそれ/″\医者を呼びますものを、大層お窶《やつ》れの御様子、何か御意《ぎょい》に入らんことがござれば、これ/\と仰《おっし》ゃり聞けまするように願います」
 母「はい、私は喰《た》べません、餓死致します、お前の様な匹夫の勇を奮って浪島の家名を汚《けが》す者の顔を見るのが厭だから私は餓死致します、親父《おとっ》さまは早く此の世をお逝《なくな》り遊ばし、母親が甘う育てたからお前が左様なる身持になり、親分とか勇肌《いさみはだ》の人と交際《つきあい》をして喧嘩の中へ入り、男達《おとこだて》とか何《なん》とか実にどうも怪《け》しからん致方《いたしかた》、不埓者め、手前も天下の禄を食《は》んだ浪島の子ではないか、左様なる不孝不義の子の顔を見るのは厭でございますから喫《た》べずに死にますが、私が死ぬのは私が勝手に餓死致すのではなく、手前が乱暴を働く
前へ 次へ
全321ページ中181ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング