なれども、彼《あ》の女は元より母親に食物を与えず、不孝邪慳の女で悪い者だということが明白になったから、何事もなく相済み、おあさの死骸《しがい》は野辺の送りを済ませた上で、文治郎の母は内済金五十両をおかやの持参金として贈りましたから、以前と違っておかやは母親を大切に致しますから、喜代之助は喜び、夫婦|中睦《なかむつま》しく、倶《とも》に文治郎の宅へ出入りをするようになりました。すると何《ど》う云う訳か文治郎の母がお飯《まんま》を食べなくなりましたから、文治もこれには驚きまして、
 文「これ森松」
 森「へい」
 文「お母様《っかさま》は御膳を食《あが》らんではないか」
 森「へー喰いませんよ」
 文「喰いませんよではない、昨日《きのう》も食べないではないか」
 森「一昨日《おとゝい》も喰いません」
 文「何故三日も食《あが》らんのに私《わし》に知らせん」
 森「それでも喰いたくねえって」
 文「馬鹿を云え、三日も食《あが》らずに居《お》られるものか、お加減が悪いのだから医者を呼ばなければならん、医者を呼んで来い」
 森「何《なん》だか腹が充《くち》いって」
 文「三日も召上らんでは困りま
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