来てくれと云って文《ふみ》を頼まれたから、旦那の所へ持って来るとポカ/\と二つ殴られました」
 文「喋《しゃべ》るな…此の文《ふみ》は開封致さずに置きましたから御覧下さい」
 と云われ藤原は手に取って見ると、文治郎さま参るあさより、とずう/\しく名宛《なあて》が書いてあり、以前は勤めをしたあけびしのおあさですから手は能《よく》はありませんが、書馴れて居りますから色気があって綺麗に書いてあります。其の文《ふみ》に此方《こちら》へ越して来た時からお前さんを見染めて忘れる暇はないゆえ、藤原と別れて独りものになりましたらば、切《せ》めてお盃の一つも戴きたい、亭主のある身の上で斯様《かよう》な事を申すのは浮気な女と思召しもありましょうが、喜代之助は真実《ほんとう》の亭主ではない、只今まで藤原|母子《おやこ》の者は私《わたくし》から貢いで居りました、藤原の不実はこれ/\お母《ふくろ》の心の悪い事はこれ/\で、一体喜代之助が屋敷を逐出《おいだ》されたのは私《わたくし》故ではなく、全体了簡がけちんぼで、意地が悪くって、野呂間《のろま》だからとか何《なん》とか悉《こと/″\》く書いてあるから、藤原は文《
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