リッと坐ったが、老母には様子が分りませんから、
母「おや/\これは好《よ》くいらっしゃいました、生憎文治郎は不在でございますが、何御用でございますか、私《わたくし》迄御用向を仰しゃり聞けを願います、お母様《かゝさま》も御不快の御様子でございまして、一寸《ちょっと》伺いたく思いましたが、私《わたくし》も寄る年で出無性《でぶしょう》になりまして、つい/\伺いませんがお加減は如何《いかゞ》でございます」
喜「はい、御老母様のお耳に入れるのも些《ち》とお気の毒だが、今日《こんにち》手前家内あさが母に対して不孝を致したでござる、然《しか》るところ文治郎殿がおいでになって、不孝な奴だと云って口を引裂《ひっさ》き、肋骨を打折《ぶちお》り、打殺《うちころ》してお帰りになったが怪《け》しからぬ訳じゃアございませんか」
母「はい、それはまア飛んだ訳で、何《なん》とも申そう様《よう》がございません」
喜「手前も驚きました、なにそれは殺しても宜しい、はい殺しても宜しい訳があればこそ殺したろう、文治郎殿も気狂《きちが》いでないから主意があって殺したろうから、主意が立てば宜しいが、主意が立たんければ手前も
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