て参り、右の次第を聞き、怒《おこ》ったの怒らないのと云うのではありません。予《かね》て文治と云う奴は、腕を突張《つッぱっ》て喧嘩の中や白刃《はくじん》の中へ飛込むと云う事は聞いて居《お》ったが、仮令《たとえ》何《ど》のような儀があっても人の女房を手ごめに殺すとは捨置きにならん、拙者も元は右京の家来、二百六十石を取った藤原喜代之助、此の儘捨置きにはならん、と云って大小を取出し、黒ペラの怪しい羽織を着、顔色変えて文治郎方の玄関へ係り、
 喜「頼む/\」
 森「お出でなせい、何《なん》でげす」
 と藤原の顔を見ると様子が違っているから、少し薄気味が悪くなり、後《あと》に下って、
 森「あの/\生憎《あいにく》旦那はお留守でござえやすが、何《なん》の御用ですか」
 喜「御不在とあらば止《や》むを得ん、御老母様にお目に懸りたい、藤原喜代之助でござる、御免を蒙《こうむ》る」
 と云いながら提《ひっさ》げ刀《がたな》でズーッと通りましたから、森松は文《ふみ》の取次をした事が露顕したか、立花屋で御馳走になって二分貰った事が顕《あら》われやしないかと思って気を揉《も》んでいると、喜代之助は老母の前へピタ
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