る。藤原が帰って来て其の事を母が話すと、
 あ「いゝえお母《っか》さんは今日は五度《いつたび》御膳を食《あが》って、終《しま》いにはお鉢の中へ手を突込《つッこ》んで食《あが》って、仕損《しそこ》ないを三度してお襁褓《しめ》を洗った」
 などと云うと、元より誑《たぶら》かされているから、
 藤「お母《っか》さん、そんな事をなすっては宜しくありません、えゝ」
 と云って少しも構いませんから、隣近所から恵んでくれる食物《たべもの》で漸《ようや》く命を繋《つな》いで居ります。或日の事、おあさが留守だから隣にいる納豆売の彦六《ひころく》が握飯《むすび》を拵《こしら》えて老母の枕許《まくらもと》へ持って来て、
 彦「御隠居さま、長らく御不快で嘸《さぞ》お困りでしょう、今お飯《まんま》を炊いた処が、焦《こげ》が出来たから塩握飯《しおむすび》にして来ましたからお食《あが》んなさい」
 母「有難うございます、あなた様、彼《あれ》が私を※[#「※」は「しょくへん+曷」、130−6]《ほし》殺そうと思って邪慳《じゃけん》な奴でございます、藤原も彼《あ》んな奴ではございませんでしたが、此の頃は馴合《なれあ》い
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