《ぶ》たれたよ」
 國「なに打たれて黙って帰《けえ》って来るような手前《てめえ》じゃアねえじゃねえか、何奴《どいつ》が打ったのだ」
 浪「夕べお前が帰《けえ》って来たらば直《す》ぐに仕返《しけえ》しに行こうと思っていたが、いつでも杉の湯に来る奴が来たから、お前《めえ》に教わった通りにして、向うへ強請に往《い》こうと思うと、業平橋にいる文治と云う奴が来て、突然《いきなり》に私を打って、打殺して仕舞《しまう》んだが助けてやるから家《うち》へ帰《けえ》って亭主の國藏と云う奴に云って、いつでも仕返《しけえ》しに来いと云って、人を蚰蜒《げじ/\》見たように摘《つま》み出しゃアがったよ、悔しくって/\仕様がねえから、仕返しに往っておくれよ」
 國「静かにしろい、業平文治と云う奴は黒い羽織を着ている奴だな、結構だ」
 浪「何が結構だ」
 國「寒さの取付《とっつ》きに立派な人に打《ぶ》たれて仕合せよ、悪い跡はいゝやい」
 と云いながら落着き払って出て行《ゆ》きましたが、何処《どこ》で買ったか膏薬《こうやく》を買って来まして、お浪の身体へベタ/\と打《ぶ》たれもしない手や何かへも貼付け、四つ手《で》駕籠
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