かた》りをして衆人を苦しめると云う事は予《かね》て聞いて居《お》ったが、此の文治郎が本所に居《お》る中《うち》は捨置《すてお》く訳にはいかん、それに此の文治の事を青二才などと云おうようなき悪口《あっこう》を申したな、手前のような奴を活《い》かして置いては大勢の人の難儀になるから打殺《ぶちころ》すのであるが、女の事ゆえ助けてやる、早く家《うち》へ帰って亭主の國藏という奴に、己《おれ》は業平橋に居る浪島文治郎と云うものだから、打《ぶ》たれたのを残念と思うならいつでも仕返しに来いと屹《きっ》と申せよ」
と云いながらトーンと障子を明けて、表へ突き出したから、お浪は倒れて眼が眩《くら》みましたが、漸《ようや》くの事で這《は》うようにして家《うち》へ帰って、國藏に此の事を話そうと思うと、其の晩は帰りませんで、翌日の昼時分に帰って来まして、
國「お浪今|帰《けえ》ったよ、寝てえちゃアいけねえ、火も何も消えて居るじゃアねえか」
浪「起きられやしねえよ、頭が割れそうだア」
國「なんだ頭が割れそうだ、頭が痛けりゃア按摩《あんま》でも呼んで揉《も》んで貰いねえナ」
浪「拳骨《げんこつ》で廿ばかり打
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