けるものか、青い口喙《くちばし》でヒイ/\云うな、引込んでろい」
 文「はい/\悪い処は重々詫をしますが、大の男が板の間へ手をついて只管《ひたすら》詫をすれば御亭主の御立腹も解けましょうから幾重にも当人に成替《なりかわ》って」
 浪「いけねえよ、愚図々々口をきかねえで引込みなせい」
 と云いながらズッと番頭を引立《ひきた》てに掛るから、
 文「あゝ待ちなさい/\、それでは是程云っても聞き入れませんかえ」
 浪「聴かれませんよ」
 文「愈《いよ/\》聴かれなければ此方《こっち》にも了簡《りょうけん》がある」
 浪「聴かなければどうする」
 文「聴入《きゝい》れなければ斯様《かよう》致す」
 と云いながら突然《いきなり》お浪の髻《たぶさ》を取って引倒《ひきたお》し、拳骨《げんこつ》を固めて二ツ打《ぶ》ちましたが、七人力ある拳骨ですから二七十四人に打たれるようなもので、痛いの何《な》んのと申して、悪婆《あくば》のお浪も驚きました。なれども急所を除《よ》けて打ちます。
 文「これ、汝《われ》は不届《ふとゞき》ものだ、手前の亭主はお構い者で、聞けば商人《あきんど》や豪家へ入り、強請《ゆすり》騙《
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