れから猪《い》の熊《くま》の亥太郎と云われました。其の後《のち》小市さんの所へ酒を二升持って礼に参り「あなたのお蔭で脊中の刺青が熊になった」と云われた時は流石《さすが》の小市も驚いたと云う程強い男ですから、牢から出ると、喧嘩の相手の文治郎のどてっ腹を抉《えぐ》らなければならんと云うので胴金《どうがね》造りの脇差を差して直ぐに往《ゆ》こうと思ったが、そんな乱暴の男でも親の事が気に掛ると見えまして、家《うち》へ帰って見ると、親父はすや/\と能く寝て居りますから、
亥「爺《ちゃん》能く寝ているな、勘忍してくんねえ、己《おら》ア復《ま》た牢へ往《ゆ》くかも知れねえ、業平橋の文治を殺して亥太郎の面《つら》を磨くから、己《おれ》が牢へ往って不自由だろうが勘忍して呉んねえ」
と云われ長藏は目を覚し、
長「手前《てめえ》は牢から出て来ても家《うち》に一日も落付いていず、やれ相談だの、やれ何《なん》だのと云ってひょこ/\出歩きやアがって、何《なん》だ権幕《けんまく》を変えて脇差なんどを提《さ》げて、また喧嘩に往《ゆ》くのだろうが、喧嘩に往くと今度は助かりゃアしねえぞ、喧嘩に往くのなら己《おら》ア見
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