るのが辛《つれ》えから、手前《てめえ》今度出たら再び生きて帰《けえ》るな」
亥「爺《ちゃん》、己《おら》ア了簡があって業平橋の文治郎のどてっ腹を抉って腹癒《はらい》せをして来るのだ」
長「何だ、腹が痛《いて》えと」
亥「そうじゃアねえ、業平橋の文治郎を打《たゝ》っ斬って仕舞うのだ」
長「此の野郎とんでもねえ奴だ、業平橋の文治郎様の所へは己《おれ》がやらねえ、死んでもやらねえ、業平文治郎さまと云うのは見附|前《めえ》の喧嘩の相手だろう、其の方《かた》を斬りに往《ゆ》くんなら己を殺して往け」
亥「なんだって文治郎を殺すのにお前《めえ》を殺して往くのだ」
長「何もあるものか、手前《てめえ》は知るめえが、去年の暮の廿六日に手前《てめえ》が牢へ往って其の留守に、忘れもしねえ廿八日、業平橋の文治郎様が来て金を十両見舞に持って来てくれた、手前《てめえ》が牢へ往って己が煩っていて気の毒だ、勘忍してくれと云って十両の金をくれた、其の金があったればこそ己が今まで斯うやって露命を繋《つな》いで来た、其の大恩ある文治郎様に刃物を向けて済もうと思うか、さア往《ゆ》くなら己の首を斬って往け、殺して往け
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