\と台所から抜出して仕舞いましたが、さアもう文治郎の所へ行《ゆ》くことは出来ません。友之助はそんなことは少しも知りませんから、
友「お村、此の頃は旦那の所へ往《ゆ》かないが何《ど》うしたのだえ」
村「旦那は機嫌かいで、機嫌のいゝ時と悪い時とは大変違いますよ、そうして幾ら堅いと云っても若いから、時々厭なことを云うから余《あんま》り近く往《ゆ》かない方がいゝよ、何処《どこ》か離れた所へ越そうじゃないか」
と云われ、友之助は素《もと》より気のいゝ人だから、
友「そうか、そんなことがあるのか、それなら他へ越そう」
と女房の云いなり次第になり、遂に文治郎に無沙汰《むさた》で銀座三丁目へ引越しましたが、後に文治郎が無名国へ漂流するのもお村の悪い為でありますから、女と云う者は恐るべきものでございます。さてお話二つに岐《わか》れまして、彼《か》の喧嘩の裁判は亥太郎が入牢《じゅろう》を仰せ付けられ、翌年の二月二十六日に出牢致しましたが、別に科《とが》はないから牢舎《ろうや》の表門で一百の重打《おもたゝ》きと云うので、莚《むしろ》を敷き、腹這《はらんばい》に寝かして箒尻《ほうきじり》で脊中を打《
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