も起しはしないかと思って、それが心配だ」
村「彼様《あん》なことを仰《おっし》ゃる、悋気などはございません、何時《いつ》でも往って来い、彼様《あゝ》やって心中する処を旦那のお蔭で助かったのだから、浪島の旦那がお前を妾《てかけ》に遣《よこ》せと仰ゃれば直ぐに上げると云って居ります」
と一寸《ちょっと》云う口も商売柄だけに愛敬に色気を含んで居ります。まさか友之助がお村を妾《めかけ》にやるとも申しますまいが、自然と云いように色気があるので、何《ど》んなものでも酒を飲むと少しは気が狂って来るものと見え、文治もお村を美《い》い女だと思った心が失せないか、
文「手前と斯うやって酒を飲むのが一番いゝ心持だが、若《も》し己が冗談を云いかけた時は手前は何《ど》うする」
村「おや旦那旨いことばかり仰《おっし》ゃって私などに冗談を仰ゃる気遣《きづか》いはありませんが、本当に旦那様の仰ゃることなら私は死んでも宜しい、有難いことだと思って居ります」
文「それだから手前は世辞を云ってはいかんと云うことよ」
村「お世辞でも何《なん》でもありません、有難いことゝ思っても仕方がないが、旦那様のような凛々《り
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