し》と見附前で喧嘩を致しましてねえ」
 長「へえ五時《いつゝ》前に癲癇《てんかん》が起りましたえ」
 森「そうじゃアねえ、亥太郎|兄《あにい》と此の旦那と見附前で喧嘩をして、牢|行《ゆき》になったから気の毒だって、爺《とっ》さんお前の所へ此の旦那が見舞《みめえ》に来たのだ」
 長「はあお前さん、何《ど》うも貴方の様に人柄の優しい人と喧嘩をするとは馬鹿な野郎で、大方|食《くれ》え酔《よっ》て居たのでございましょう、子供の時分から喧嘩早《けんかッぱよ》うございまして、番毎《ばんごと》人に疵《きず》を付け、自分も疵だらけになって苦労ばかりさせるが、貴方は能くまア腹立もなく見舞《みめえ》に来て下すって、誠に有難うございます、亥太郎が牢から出れば是非お詫事に連れて出ますから、何うか私《わし》に免じて勘弁しておくんなさい」
 文「何う致しまして、これは心計りですが、亥太郎さんも御気性だから健《すこや》かで速《すみやか》に御出牢になりましょうが、それまでの助けにもなるまいが、真《ほん》の土産のしるしに上げますから、何か温《あったか》い物でも買って喫《あが》って下さい」
 長「これはなんです」
 森「
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