もと》の無名擦《むめいす》りあげの銘剣の柄《つか》へ手を掛け、居合腰《いあいごし》になって待って居りましたが、これは何《ど》うしても喧嘩にはなりません。見付の役人が捨《すて》ておきません。馬鹿だか気違いだか盗賊だか分りませんが、飾ってある徳川政府のお道具を持出しては容易ならんから、見附に詰め合せたる役人が、突棒《つくぼう》刺股《さすまた》※[#「※」は「かねへん+「戻」で中に「大」のかわりに「犬」をあてる」、104−2]《もじり》などを持って追掛《おっか》けて来て、折り重り、亥太郎を俯伏《うつぶせ》に倒して縄を掛け、直《すぐ》に見附へ連れて来て調べると、亥太郎の云うには、
亥「私《わっち》が黙って持って往ったら泥坊でしょうが、喧嘩をするのに棒がねえから貸しておくんねえって断って持って往ったから縛られるこたアねえ、天下《てんが》の道具だから貸しても宜《い》いだろう、私《わっち》も天下《てんか》の町人だ」
と云って訳が分らないが、天下の町人と云う廉《かど》で見附から町奉行《まちぶぎょう》へ引渡しになって、別に科《とが》はないが、天下の飾り道具を持出した廉で吟味中|入牢《じゅろう》を申し
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