で此の方に身を任せて、線香一本で義理を立《たて》る了簡《りょうけん》だろう、そんな不人情と知らずに多くの金を遣《つか》い果たして実に面目ない」
 文「まア/\待ちなさい、暫《しばら》く待っておくんなさい、どうか待って下さい、腹を立ってはいかない、お村さんはお前さんが死んで仕舞ったと思って義理がわるいから是非死のうと云うのを、私《わし》が種々《いろ/\》と云って止めたからで、決して心が変ったと云う訳ではないから落付いて話が出来ます」
 友「宜しゅうございます、そう云う腹の腐った女でございますなら思いきりますから、女房《にょうぼ》にでも情婦《いろ》にでも貴方《あなた》の御勝手になさい、左程《さほど》執心《しゅうしん》のあるお村なら長熨斗《ながのし》をつけて上げましょう」
 文「私《わし》はお村さんとやらに初めてお目に懸ったので、此の上州前橋の松屋新兵衞さんと云うお方と一緒に、今日|上流《うわて》で一杯飲んで帰る時、船首《みよし》にぶつかった死骸を引揚げて見ると、直《すぐ》に気が付いたから、好《よ》い塩梅《あんばい》だと思って段々様子を聞くと、これ/\だと云って又飛込もうとするから、一旦助け
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