のかわりに「いとへん」をあてる」、84−5]袍《どてら》の姿《なり》で突然《いきなり》唐紙《からかみ》を明けて座敷へ飛込みまして物をも云わせずお村の髷《たぶさ》を取って二つ三つ打擲致しましたから、一座の者は驚いて、
 森「何《なん》だ/\/\何だ/\何処《どこ》の人だか此処《こゝ》へ入ってはいけません」
 友「はい/\此のお村に誑《ばか》されまして、今晩牛屋の雁木で心中致しました自業自得の斃《くたば》り損《ぞこな》いでございます」
 文「それじゃアお前さんがお村さんと約束をして飛込んだ友之助さんと云う人かえ」
 友「へいそうです…これお村、能く聞け、手前のような不実な奴が世の中にあるか、手前の方で一人で死ぬと云って愚痴を云い、己《おれ》も死のうと云うと一緒なら死花《しにばな》が咲くと云ったじゃないか、己は死後《しにおく》れて死切《しにき》れないから漸《ようや》く堤《どて》へ上って、吾妻橋から飛込もうと思って来た処が、まだ人通りがあって飛こむ事もならねえから、此の海老屋へ来て僣《ひそ》んでいたから手前が助かって来た事を知ったのだ、若《も》し知らずに己が吾妻橋から飛こんで仕舞ったら手前は跡
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