82−12]袍《どてら》を持って来な」
 と着物を着替《きか》え、友之助は二階の小間《こま》に入って、今に死のう、人が途断《とぎ》れたら出ようと思って考えているから酒も喉《のど》へ通らず、只お村は流れたかと考えて居りますと、広間の方で今上って来たか、前からいたのかそれは知りませんが、がや/\と人声がするから、能く聞いてみると、どうもお村の声のようだから、はてなと抜足《ぬきあし》をして廊下伝いに来て襖に耳を寄せると、中にはかん/\燈火《あかり》が点《つ》きまして大勢人が居ります。
 文治「姉さん、お前能く考えて御覧なさい、お前さんは義理を立って又飛込《とびこも》うと云うのは誠に心得違いと云うものだ、と云うはお前さんの寿命が尽きないので、私共の船の船首《みよしはな》へ突当《つきあた》って引揚げたのは全く命数の尽きざる所、其の友さんとかは寿命が尽きたから流れて仕舞ったのだに、それをお前さんが義理を立って又|飛込《とびこも》うと云うのは誠に心得違いだ、それよりは友さんも親族《みより》のない人なら其の人の為には香花《こうはな》でも手向《たむ》けた方が宜しい、またお母《っか》さんもお前さんを女郎に
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