話《はな》しを考へました、是《これ》は昔風《むかしふう》の獣物《けもの》が口《くち》を利《き》くといふお話の筋《すぢ》でございます。
 多くの黒牛《くろうし》と白牛《しろうし》が這入《はいつ》て来《き》まして、「御免《ごめん》なさい。「ハイ。「扨《さて》誠にどうもモウ此度《このたび》は御苦労様《ごくらうさま》のことでございます、実《じつ》に何《ど》うも云《い》ひやうのない貴方《あなた》は冥加至極《みやうがしごく》のお身《み》の上《うへ》でげすな。「ヘエ有難《ありがた》うございます。「マア斯《か》ういふ事は滅多《めつた》にない事でございます、我々《われ/\》のやうな牛は実《じつ》に骨の折れる事|一通《ひととほ》りではありません、女牛《めうし》の乳《を》を絞《しぼ》られる時の痛さといふのは耐《たま》りませんな、夫《それ》にまア私《わたし》どもの小牛等《こうしなど》は腹《はら》の毛《け》をむしられて、八重縦《やへたて》十|文字《もんじ》に疵《きず》を付《つ》けられて、種疱瘡《うゑばうさう》をされ布《ぬの》で巻《ま》かれて、其《そ》の痒《かゆ》い事は一|通《とほ》りではありません、夫《そ》れに
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