私《わたくし》をそれ程までに、これははや口ではお礼が述べきれましねえ、何ともヘイ分らなく有難うございます、それだが武士に成るにゃア私もいろはのいの字も知んねえもんだから誠に困るんで」
源「実は貴様も知っている水道端の相川のう、彼処《あすこ》にお徳という十八ばかりの娘があるだろう、貴様を彼処の養子に世話をしてやろうと兄上が仰しゃった」
相「これははやモウどうも、本当でごぜえますか、はやどうも、あのくれえなお嬢様は世間にはないと思います、頬辺《ほうぺた》などはぽっとして尻などがちま/\として、あのくれえな美《い》いお嬢様はたんとはありましねえ」
源「向うは高《たか》が寡《すけ》ないから、若党でも何《なん》でもよいから、堅い者なればというのだから、手前なれば極《ごく》よかろうとあらまし相談が整った所が、隣の草履取の孝助めが胡麻をすった為に、縁談が破談となってしまった、孝助が相川の男部屋へ行ってあの相助はいけない奴で、大酒飲《おおざけのみ》で、酒を飲むと前後を失ない、主人の見さかいもなく頭をぶち、女郎は買い、博奕《ばくち》は打ち、其の上|盗人《ぬすっと》根性があると云ったもんだから、相川も厭気
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