て残暑が強く皆様御機嫌よろしゅう、此方《こちら》は風がよく入りますからいらっしゃいまし」
 源次郎は小声になり、
「孝助は昨夜《ゆうべ》の事を喋《しゃべ》りはしないかえ」
國「いえサ、孝助が屹度《きっと》告口《つげぐち》をしますだろうと思いましたに、告口をしませんで、殿様に屋根瓦が落ちて頭へ当り怪我をしたと云ってね、其の時|私《わたくし》は弓の折《おれ》で打《ぶ》たれたと云わなければよいと胸が悸動《どき/\》しましたが、あの事は何《なん》とも云いませんが、云わずにいるだけ訝《おか》しいではありませんか」
 と小声で云って、態《わざ》と大声で、
國「お熱い事この節のように熱くっては仕方がありません」
 又小声になり。
國「いえ、それに水道端の相川新五兵衞様の一人娘のお徳様が、宅《うち》の草履取の孝助に恋煩いをしているとサ、まア本当に茶人《ちゃじん》も有ったものですねえ、馬鹿なお嬢様だよ、それからあの相川の爺さんが汗をだく/\流しながら、殿様に願って孝助をくれろと頼むと、殿様も贔屓《ひいき》の孝助だから上げましょうと相談が出来まして、相川は帰りましたのですよ、そうして、今日は相川で結納の取
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