ので」
新「あの側に並べてある墓は」
僧「あれはその娘のお附《つき》の女中で是も引続き看病疲れで死去いたしたから、一緒に葬られたので」
新「そうですか、それでは全く幽霊で」
僧「なにを」
新「なんでも宜《よろ》しゅうございます、左様なら」
 と云いながら恟《びっく》りして家《うち》に駈け戻り此の趣《おもむき》を白翁堂に話すと、
勇「それはまア妙な訳で、驚いた事だ、なんたる因果な事か、惚れられるものに事を替えて幽霊に惚れられるとは」
新「何《ど》うもなさけない訳でございます、今晩もまたまいりましょうか」
勇「それは分らねえな、約束でもしたかえ」
新「へえ、あしたの晩|屹度《きっと》来ると、約束をしましたから、今晩|何《ど》うか先生泊って下さい」
勇「真平御免《まっぴらごめん》だ」
新「占いでどうか来ないようになりますまいか」
勇「占いでは幽霊の所置《しょち》は出来ないが、あの新幡随院の和尚は中々に豪《えら》い人で、念仏修業の行者で私も懇意だから手紙をつけるゆえ、和尚の所へ行って頼んで御覧」
 と手紙を書いて萩原に渡す。萩原はその手紙を持ってやってまいり、
「何《ど》うぞ此の書面を良石《り
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