はない、逢引したのは今晩で七日目ですが。というものゝ、白翁堂の話に萩原も少し気味が悪くなったゆえ顔色《がんしょく》を変え。
新「先生、そんなら是から三崎へ行って調べて来ましょう」
 と家《うち》を立出《たちい》で、三崎へ参りて、女暮しで斯《こ》ういう者はないかと段々尋ねましたが、一向に知れませんから、尋ねあぐんで帰りに、新幡随院《しんばんずいゝん》を通り抜けようとすると、お堂の後《うしろ》に新墓《あらはか》がありまして、それに大きな角塔婆《かくとうば》が有って、その前に牡丹の花の綺麗な灯籠が雨ざらしに成ってありまして、此の灯籠は毎晩お米が点《つ》けて来た灯籠に違いないから、新三郎はいよ/\訝《おか》しくなり、お寺の台所へ廻り、
新「少々|伺《うかゞ》いとう存じます、あすこの御堂《おどう》の後《うしろ》に新らしい牡丹の花の灯籠を手向《たむ》けてあるのは、あれは何方《どちら》のお墓でありますか」
僧「あれは牛込の旗下《はたもと》飯島平左衞門様の娘で、先達《さきだっ》て亡くなりまして、全体|法住寺《ほうじゅうじ》へ葬むる筈《はず》のところ、当院は末寺《まつじ》じゃから此方《こちら》へ葬むった
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