聞いていますが、先生どうか死なゝい工夫はありますまいか」
勇「其の工夫は別にないが、毎晩貴方の所へ来る女を遠ざけるより外《ほか》に仕方がありません」
新「いゝえ、女なんぞは来やアしません」
勇「そりゃアいけない、昨夜|覗《のぞ》いて見たものがあるのだが、あれは一体何者です」
新「あなた、あれは御心配をなさいまする者ではございません」
勇「是程心配になる者はありません」
新「ナニあれは牛込の飯島という旗下《はたもと》の娘で、訳あってこの節は谷中の三崎村へ、米という女中と二人で暮しているも、皆《みん》な私《わたくし》ゆえに苦労するので、死んだと思っていたのに此の間|図《はか》らず出逢い、其の後《のち》は度々《たび/\》逢引《あいびき》するので、私はあれを行《ゆ》く/\は女房に貰う積りでございます」
勇「飛んでもない事をいう、毎晩来る女は幽霊だがお前知らないのだ、死んだと思ったなら猶更《なおさら》幽霊に違いない、其のマア女が糸のように痩《や》せた骨と皮ばかりの手で、お前さんの首ッたまへかじり付くそうだ、そうしてお前さんは其の三崎村にいる女の家《うち》へ行った事があるか」
 といわれて行った事
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