は唯《たゞ》へい/\有難うございますと泣々《なく/\》、
孝「殿様来月四日に中川へ釣《つり》に入《いら》っしゃると承わりましたが、此の間《あいだ》お嬢様がお亡くなり遊ばして間《ま》もない事でございますから、何《ど》うか釣をお止《や》め下さいますように、若《も》しもお怪我があってはいけませんから」
飯「釣が悪ければやめようよ、決して心配するな、今云った通り相川へ行ってやれよ」
孝「何方《どちら》へかお使《つかい》に参りますのですか」
飯「使《つかい》じゃアない、相川の娘が手前を見染めたから養子に行って遣《や》れ」
孝「へえ成程、相川様へどなたが御養子になりますのです」
飯「なアに手前が往《ゆ》くのだ」
孝「私《わたくし》はいやでございます」
飯「べらぼうな奴だ手前の身の出世になる事だ、是ほど結構な事はあるまい」
孝「私《わたくし》は何時《いつ》までも殿様の側に生涯へばり附いております、ふつゝかながら片時《へんじ》も殿さまのお側を放さずお置き下さい」
飯「そんな事を云っては困るよ、己《おれ》がもう請《う》けをした、金打《きんちょう》をしたから仕方がない」
孝「金打をなすッてもいけません」

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