すから、兎に角お願いに出て、殿様から孝助殿を申受けて来ようと云って参りましたが、どうかあの孝助殿を手前の養子に下さるように願います」
飯「それはまア有難いこと、差上げたいね」
相「ナニ下さる、あゝ有難かった」
飯「だが一応当人へ申聞《もうしき》けましょう、嘸《さぞ》悦ぶ事で、孝助が得心の上で確《しか》と御返事を申上げましょう」
相「孝助殿は宜《よろ》しい、貴方《あなた》さえ諾《うん》と仰しゃって下さればそれで宜しい」
飯「私が養子に参るのではありませんから、そうはいかない」
相「孝助殿はいやと云う気遣《きづか》いは決してありません、唯《たゞ》殿様から孝助行ってやれとお声掛りを願います、あれは忠義ものだから、殿様のお言葉は背《そむ》きません、私《わたくし》も当年五十五歳で、娘は十八になりましたから早く養子をして身体を固めてやりたい、殿様どうか願います」
飯「宜しい、差上げましょう、御胡乱《ごうろん》に思召《おぼしめ》すならば金打《きんちょう》でも致そうかね」
相「そのお言葉ばかりで沢山、有難うございます、早速娘に申し聞けましたら、嘸《さぞ》悦ぶ事でしょう、これがね殿様が孝助に一応申し聞け
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