、外《ほか》に唯《たゞ》一つの見所《みどころ》がありますからと斯《こ》ういいますから、何処《どこ》に見所があると聞きますと、あのお忠義が見所でございます、主《しゅう》へ忠義のお方は、親にも孝行でございましょうねえ、といいましたから、それは親に孝なるものは主へ忠義、主へ忠なるものは親へは必ず孝なるものだといいますと、娘が私《わたくし》の家《うち》はお高《たか》は僅《わず》か百俵二|人扶持《にんふち》ですから、他家《ほか》から御養子をしてお父さまが御隠居をなさいましても、もし其の御養子が心の良くない人でも来た其の時は、此方《こちら》の高が少ないから、私の肩身が狭く、遂《つい》にはそれがために私までが、倶《とも》にお父さまを不孝にするように成っては済みません、私も只今まで御恩を受けましたにより何《ど》うか不孝をしたくない、就《つ》きましては仮令《たとい》草履取でも家来でも志の正しい人を養子にして、夫婦諸共親に孝行を尽《つく》したいと思いまして、孝助殿を見染め、寝ても覚めても諦められず、遂に病となりまして誠に相済みません、と涙を流して申しますから、私も至極《しごく》尤《もっと》もの様にも聞えま
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