ら此の老人が水をあびて神仏《かみほとけ》へ祈るくらいな訳で、ところが昨夜娘のいうには、私《わたくし》の病気は実は是々《これ/\》といいましたが、其の事は乳母《おんば》にも云われないくらいな訳ですが、其処《そこ》が親馬鹿の譬《たとえ》の通り、お蔑《さげす》み下さるな」
飯「どういう御病気ですな」
相「私《わたくし》もだん/\と心配をいたして、どうか治してやりたいと心得、いろ/\医者にも掛けましたが、知れない訳で、是ばかりは神にも仏にも仕ようがないので、なぜ早く云わんと申しました」
飯「どういう訳で」
相「誠に申しにくい訳で、お笑い成さるな」
飯「何《なん》だかさっぱりと訳が解りませんね」
相「実は殿様が日頃お誉《ほ》めなさる此方《こちら》の孝助殿、あれは忠義な者で、以前は然《しか》るべき侍の胤《たね》でござろう、今は零落《おちぶれ》て草履取をしていても、志《こゝろざし》は親孝行のものだ、可愛《かわい》いものだと殿様がお誉めなされ、あれには兄弟も親族《みより》もない者だから、行々《ゆく/\》は己《おれ》が里方《さとかた》に成って他《ほか》へ養子にやり、相応な侍にしてやろうと仰しゃいますから
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