白翁堂勇齋《はくおうどうゆうさい》という人相見《にんそうみ》が、万事|私《わたくし》の世話をして喧《やか》ましい奴だから、それに知れないように裏からそっとお這入り遊ばせ」
と云う言葉に随い、両人共に其の晩泊り、夜《よ》の明けぬ内に帰り、是より雨の夜《よ》も風の夜も毎晩来ては夜の明けぬ内に帰る事十三日より十九日まで七日《なのか》の間重なりましたから、両人が仲は漆《うるし》の如く膠《にかわ》の如くになりまして新三郎も現《うつゝ》を抜かして居りましたが、こゝに萩原の孫店《まごだな》に住む伴藏というものが、聞いていると、毎晩萩原の家《うち》にて夜夜中《よるよなか》女の話声《はなしごえ》がするゆえ、伴藏は変に思いまして、旦那は人がよいものだから悪い女に掛り、騙《だま》されては困ると、密《そっ》と抜け出て、萩原の家《うち》の戸の側へ行って家の様子を見ると、座敷に蚊帳《かや》を吊り、床《とこ》の上に比翼※[#「蓙」の左の「人」に代えて「口」、52−11]《ひよくござ》を敷き、新三郎とお露と並んで坐っているさまは真《まこと》の夫婦のようで、今は耻かしいのも何も打忘《うちわす》れてお互いに馴々《なれ/
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