約束でもした男があってそんな事を云うのだろうと、怒《おこ》っても、一人のお嬢様で斬る事も出来ませんから、太い奴だ、そういう訳なら柳島にも置く事が出来ない、放逐《ほうちく》するというので、只今では私とお嬢様と両人お邸《やしき》を出まして、谷中《やなか》の三崎《さんさき》へ参り、だいなしの家《いえ》に這入《はい》って居りまして、私が手内職などをして、どうか斯《こ》うか暮しを付けていますが、お嬢様は毎日々々お念仏|三昧《ざんまい》で入らっしゃいますよ、今日は盆の事ですから、方々《ほう/″\》お参りにまいりまして、晩《おそ》く帰る処《ところ》でございます」
新「なんの事です、そうでございますか、私《わたくし》も嘘でも何《なん》でもありません、此の通りお嬢さまの俗名を書いて毎日念仏しておりますので」
米「それ程に思って下さるは誠に有難うございます、本当にお嬢様は仮令《たとい》御勘当に成っても、斬られてもいゝから貴方のお情《なさけ》を受けたいと仰しゃって入らっしゃるのですよ、そしてお嬢様は今晩|此方《こちら》へお泊め申しても宜しゅうございますかえ」
新「私《わたし》の孫店《まごだな》に住んで居る、
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